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RACING-DRIVER.JP編集部
2025.04.28

【前編】関谷正徳代表が語る。若手育成のルーツとKYOJOドライバー達に求めるもの

日本人初のル・マン24時間レース総合優勝を果たすなど長きに渡り、国内外でレーシングドライバーとして活躍した関谷正徳氏。引退後は全日本GT選手権、スーパーGTのチームTOM'Sの監督やフォーミュラトヨタ・レーシングスクール(FTRS)の校長を務め、数々のドライバーを育成。2013年に自ら設計監修を行なったレーシングカー「kuruma」を用いたワンメイクレース インタープロトシリーズ、女性だけのレース KYOJO CUPを立ち上げるなど長きに渡り若手ドライバーの育成に注力してきた関谷氏。

RACING-DRIVER.JPはインタープロトシリーズ及びKYOJO CUPとオーガナイザーパートナーとして提携する中でこの度、関谷氏に独占イタンビューを敢行。関谷氏の若手育成のルーツや育成への想い、KYOJO CUPに出場するドライバーに求めること、そしてKYOJO CUPへの出場を夢見る若手女性レーサーや当サイトをご覧の皆様へメッセージをお寄せいただきました。
今回は前編として、関谷氏のドライバー育成のルーツやモータースポーツにおける女性活躍、そしてKYOJOドライバーへのメッセージについてお伝えします。

■若手育成に力を入れた経緯
そもそもなぜ関谷氏は長期に渡り育成に携わってきたのか。そこには自身の現役時代の苦労に基づく思いと自身とは同じ思いをして欲しくないという強い思いがあった。
「30年以上現役として活動する中で僕らの時代は誰かに教えてもらえる時代ではなかった。理解をするまでに手間とお金と時間が掛かった。そういった自分と同じような苦労をしないよう短期間で学び実践できる場を若手ドライバーに提供することで成長の速度を上げ、合理的に学べる場を提供するため育成に力を入れ始めた。データロガーもない時代に車をどう操るか、どうやったら速く走らせることができるか。当時僕は、星野一義さんが走っているのを目で見て、音で聞いて学び、どうやったら速く走れるか自分で考えていた。昔はコーチもいなければエンジニアもいないそんな時代だったので、僕らの時代は世界とのギャップがあったが、今は世界とのギャップがほとんどなくなってきたのが今日の日本のモータースポーツ。その背景にはトヨタやホンダなど国内の自動車メーカーが育成に力を入れてくれた結果であると思う。」と語った関谷氏。
どのようにしたらコンマ1秒を削り出せるかを突き詰めて考えるというのは今も30年も変わらないが当時はロガーもエンジニア、ドライビングコーチなどもいない時代。当然シミュレーターも存在しない。当時いかに参照できるソース=情報が少なく孤独な戦いを強いられたか想像を絶するが、関谷氏を始めとした育成制度の確立に尽力された存在がいたからこそ、現代は様々な情報をもとに分析したり、コーチングドライバーによるレクチャーやリアルなサーキット走行以外にも精度が高いシミュレーターランができる時代へとシフトし、世界とのギャップが縮まりつつあるのではないだろうか。

■モータースポーツにおける女性活躍について
昨今、女性ドライバーの活躍はもちろん国際的にも女性エンジニアやメカニックも数多く見るようになった。そんなモータースポーツにおける女性活躍について関谷氏は、「オリンピックの歴史を考えても当時は全体の参加者の中で女性は1割程度でモータースポーツ業界も性能競争を求めるだけで当時は速さを求める中で結果的に速いドライバーが男性しかいなかった。時代が変わり、今はオリンピックの参加者も男女半々になり競技も男女別で開催されている。
そういった世界的な女性活用の中で、女性がもっと活躍できる場をモータースポーツ業界が作って来れなかった。そこに我々が気づかなかった。モータースポーツの今後の発展を考えると女性活用は切り離して考えることはできない。」と語りました。
その中でKYOJO CUPという独立した女性レースの創設の経緯については、「スポーツとして男性と女性を分けることで公平性が保たれる。男性と女性を戦わせたらそれはスポーツにならない。男性と女性を戦わせる土俵が一つしかなかったら全ての女性の目標にならない。女性が活躍でき・女性が輝ける場所が提供できているから女性の目標になる。女性が活躍できる場所を提供しないスポーツに先は無いのでは。」と語り、関谷氏のキーワードとしては「そのフィールドで戦う女性たちの憧れの場所であること」の重要性を語りました。折角レースの世界に憧れてレースを始めても「私は無理だ。私にはできない。」そういった諦めの感情でなく、「私もお姉さん達と一緒にレースがしたい。お姉さんみたいになりたい」と女性ドライバーの憧れのフィールドがKYOJO CUPという形でもたらされたといっても過言ではない。
(写真提供 株式会社インタープロトモータースポーツ)

■KYOJO CUPに出場するドライバーに期待していること・求めていること
女性たちのモータースポーツの活躍の場として創設されたKYOJO CUP。そこで活躍するKYOJOドライバー達に関谷氏は何を求めているのだろうか。
「1番は子どもたちに憧れられる人になってほしい。僕も私もモータースポーツをやりたい、レーサーになりたい、○○選手のようになりたいと子ども達の目標になることが大事。憧れる環境を僕らが彼女達(KYOJOドライバー達)と一緒になって作っていき、これから先の子ども達にバトンをつなぐことがとても大事。」と語る。
さらに「女性ドライバーが活躍できるモータースポーツの世界が常識になることが目標。20年後にあたり前の世界にすること。テレビ離れと言われる時代だが、地上波のテレビ放送の影響力はやはり大きい。当時は親子でF1を観たり、子どもにセナという名前を付ける時代だった。配信や有料放送が当たり前になりつつある時代だが、今だにTVの影響は大きいので地上波を含め、彼女達の活躍を見られる環境を様々我々が作り、映像などを通して活躍する選手の姿を見て子供たちに「あんな選手になりたい」と子ども達に思ってもらう、そして、その子ども達がいずれ憧れの存在となり、バトンを繋いでいきたい」と語りました。
※2025年4月5日より毎週土曜深夜24時テレビ東京系列で「RACING LABO SUPER GT + KYOJO」の地上波放送がスタート

レースの世界に関わらず、夢を持ったりプロを志すきっかけには幼少期から憧れの存在が誰しもいるのではないだろうか。そんな憧れの存在を身近に感じながら、マシンやドライバーに見て触れてコミュニーケーションが取れる場として年々注目を増しているKYOJO CUP。初戦は5月10日-11日の二日間開催。入場料のみでお子様向けのイベントを含め、パドックなどドライバーへ接近できるのがKYOJO CUP最大の魅力。ぜひご家族で一度訪れてみてはいかがだろうか。
憧れの存在と出会う。そんな1日になることを願って。

後編へ続く。

プロフィール RACING-DRIVER.JP編集部
RACING-DRIVER.JP 編集部です。レーシングカートからツーリングカーレース・フォーミュラまでモータースポーツ業界の最新情報やレーサー・レーシングチームへの取材記事まで幅広く情報発信して参ります。